2022年5月29日、日本政府はスタートアップ(新興企業)を育成するための施策(5ヵ年計画)「起業家精神」教育を小中学校や高等学校に働きかけることを明記するというニュースがありました。今回は、なぜ「起業家精神」教育が求められているのか、その背景や今の現状や課題について紹介していきます。
政府が年内にも策定するスタートアップ(新興企業)を育成するための「5か年計画」に、小中学校や高校への働きかけを強化する方針を明記することがわかった。先行する大学でのアントレプレナーシップ(起業家精神)教育の裾野を広げ、人材育成を後押しする。
「起業家精神」教育、小中高で強化…新興企業育成「5か年計画」に明記へ
5月29日 読売新聞 政治面 より
目次 |
1.「起業家精神」とは何か? |
2.「起業家精神」教育を取り入れる背景 |
3.「起業家精神」を養う教育とは? |
4.「起業家精神」教育における学校現場の課題 |
5.文部科学省の取り組みについて |
6.取り組み事例 |
7.まとめ |
1.「起業家精神」とは何か?
「起業家精神」とは「新たな事業(こと)に挑戦する姿勢」のことを指します。英語では、「Entrepreneurship(アントレプレナーシップ)」と言います。「Entrepreneur(起業家)」は、フランス語で「仲介人」や「貿易商」を表す言葉です。現在は、「何もない状態から事業を立ち上げる人」という意味で使われています。「アントレプレナーシップ(entrepreneurship)」は、それに「状態、地位、役職、技能、能力、集団」などを表す接尾辞「ship」を加えた言葉です。「起業家精神」の定義はそれぞれです。
新しい事業の創造意欲に燃え、高いリスクに果敢に挑む姿勢
デジタル大辞泉(小学館)
イノベーションを武器として、変化の中に機会を発見し、事業を成功させる行動体系
ピーター・ドラッカー(経営学者)
新しい事業や企業を創造するために要求される態度や発想、能力を総称したもの。独立心、達成動機、野心、常識にとらわれない自由な発想などが企業家精神の中核をなすものと考えられている。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より
2.「起業家精神」教育を取り入れる背景
「起業家精神」を教育に取り入れる背景のひとつとして、岸田文雄総理大臣(日本政府)が掲げる成長戦略の1つ「スタートアップ・エコシステムの構築」が大きく関係しています。具体的には、2022年を「スタートアップ創出元年」として6月までに5か年計画を設定し、大規模なスタートアップ(新興企業)の支援を行う方針を固めました。目的としては、戦後の創業期に次ぐ、日本の「第二創業期」=「経済成長」を実現したいためです。しかし、スタートアップを志す学生の割合が低いことが現状です。将来の「スタートアップ」を育成するため、学校教育において「起業家精神」教育だと考えられています。
※スタートアップとは、急成長をする組織のことです。数年間で数千億円の価値評価が付く会社(GoogleやAmazon)や、数十年で世界を変革するような事業を行おうとしている会社のことをさします。
新たなイノベーション、科学技術の力を、しっかりと様々な社会課題の解決へとつなげていく。そのエンジンは、起業家精神です。ベンチャー精神こそ、新しい時代を切り拓(ひら)く原動力です。起業家精神あふれる人材を、次々と生み出していく。そのための新たなエコシステムを、我が国につくり上げていかなければなりません。
総合科学技術・イノベーション会議(2020/7/16) 安倍総理の発言より
3.起業家精神を養う教育とは?
起業家精神を養う教育とは、起業家を育成する教育ではなく、起業家的な精神と資質・能力を育む教育です。自ら課題を発見し、多くの人々と協力しながら解決のため行動することを繰り返す過程で育むことができます。さらに非認知能力の育成にも繋がります。小学校、中学校、高校、大学と段階的に分けて実践することで、子どもたちが「起業」を身近に感じ、子どもたちの将来の選択肢のひとつに「起業」が生まれやすくするための取り組みです。主に総合的な学習の時間のなかで探究学習の一環として、下記のような取り組みが行われています。 ・起業家を招いて講演会
・起業体験プログラム(ビジネスゲーム)
・地域の企業とコラボした商品開発 ・大学の研究を商業利用したプログラム
・ビジネスコンテストの実施
※非認知能力は、意欲、協調性、粘り強さ、忍耐力、計画性、自制心、創造性、コミュニケーション能力といった、測定できない個人の特性による能力のこと全般を指します。
4.「起業家精神」教育における学校現場の課題
近年、武蔵野大学でアントレプレナーシップ学部が創設されるなど、日本の教育現場では起業家精神を養う教育が徐々に増え始めています。しかし、今現在、 日本の大学においてのアントレプレナーシップ教育の受講者の割合は約1%です。大学側のリソース不足などが原因として挙げられます。また、小学校や中学校などの教育現場では、導入事例や学習時間の不足、外部連携などの理由から「起業家精神」教育が取り入れられにくいという現状があります。
5.文部科学省の取り組みについて
文部科学省では、2014年より大学を対象に「起業家精神」教育を推進してきました。2021年8月の「起業家精神」教育の課題をまとめた調査では、大学全体の理解が不足していることやリソース不足、スタートアップへの仕組みが未構築などの理由から「起業家精神」教育を受けた学生は、国内の大学生全体の約1%にとどまっています。スタートアップが生まれやすい環境づくりをはじめ、義務教育の過程に「起業家精神」教育を取り入れることにより将来の選択肢に「起業」すなわち、スタートアップ予備軍を育もうとしています。具体的には、学習指導要領に「起業家精神」教育を取り入れるなどの動きが高まっています。
【資料1】アントレプレナーシップ教育の現状について(2021年8月2日修正)より https://www.mext.go.jp/content/20210728-mxt_sanchi01-000017123_1.pdf 6.「琉球frogs」取り組み事例
「起業家精神」教育の事例として、「琉球frogs」について紹介します。『琉球frogs』は2008年より沖縄県で始まりました。1ヶ月間のグローバル研修を中心に、約半年間の高度な研修プログラムを実施するハイブリッドイノベーター型人財育成プログラムです。「地域の持続的かつ発展的な経済自立の実現のために、世界と地域をつなぐグローカル志向の若手イノベーター人財を発掘・育成する」という理念のもと、これまでに地域の中学生から大学生約100名を送り出しています。社会課題と向き合いながら、『◯◯ × テクノロジー』をテーマに、本気でビジネスを創造していきます。そのプロセスの中で、学校で学ぶ科目教育だけではない非認知能力を育むことができ、成長実感を得ることができます。私たちは、一人でも多くの若者が、限られた狭いコミュニティに中で生きる「井の中の蛙」から脱却し、世界という「大海」視点で考動できる未来人財として磨かれ、どの業界や分野でも活躍できる「アントレプレナーシップ(起業家精神)を身に付けたハイブリッドイノベーター」に変化成長することを目指しています。 ※ハイブリッドイノベーター型人財とは、理系文系の垣根を超えて「創造的思考力」と「論理的思考力」を併せ持ち、課題解決に対してクリエイティビティ×テクノロジーでアプローチできる人財のことを指します。 琉球frogs
https://www.ryukyu-frogs.com/about 琉球frogs 紹介動画
7.まとめ
今回は、「起業家精神」教育について紹介しました。日本政府がベンチャー企業を創出することにより経済発展を目指しているが、日本では「起業」を選ぶ若者が少ないほか、環境整備が追いついてないのが現状です。スタートアップの継続的な支援はもとより、「起業家精神」教育を小中学生などの義務教育から段階的に取り入れ、将来の選択肢に「起業」を選びやすくなるように官民一体となって協力していく必要があります。
FROGS流PBLワークショップ
これまで、アクティブラーニングについて紹介してきましたが、実際どう学校に取り入れていいか分からないという教育関係者の方々へ弊社が行なっている、小学生から大学生まで対応しているPBLワークショップをご紹介します。
イノベーター育成者ライセンス事業
PBLとはアクティブラーニングの手法の1つであり、現在多くの大学、高校が注目し,導入も始まっています。
「イノベーター育成者ライセンス事業」は弊社の基幹事業である、“Ryukyufrogs”から生まれたサービスです。12年間開発してきたPBLカリキュラムを一般向けにカスタマイズし、ライセンス化いたしました。
指導要領の改正によって、「探求学習を実施しなければならないが、何をしていいかわからない。実施はしているが効果的な実施方法を学びたい」などのニーズに応え、PBL/アクティブ・ラーニングカリキュラムの構築・導入、教員研修まで全面サポートします。
株式会社FROGSでは、個人・法人問わず、「教えない、気づかせる教育」ノウハウを提供する「イノベーター育成者ライセンス事業」を展開しています。
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過去に研修を行った事例
参考
【資料1】アントレプレナーシップ教育の現状について(2021年8月2日修正) https://www.mext.go.jp/content/20210728-mxt_sanchi01-000017123_1.pdf 成長戦略 内閣府ホームページ http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seisaku_kishida/seichousenryaku.html 読売新聞 政治面 5月29日 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220528-OYT1T50212/
スタートアップとは?ベンチャーとの違いを解説【図解あり】 https://www.utokyo-ipc.co.jp/column/startup/
アンントレプレナーシップ開発センター アントレプレナーシップとは
先生の学校 「社会に開かれた教育課程」を実現!小学生からのアントレプレナーシップ教育 https://www.sensei-no-gakkou.com/article/no0027/ 「生きる力」を育む起業家教育のススメ 指導 事例集 https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/downloadfiles/jireisyu.pdf
【資料3】今後のアントレプレナーシップ教育・スタートアップ創出の推進 https://www.mext.go.jp/content/000076331.pdf 武蔵野大学 アントレプレナシップ学部 https://www.musashino-u.ac.jp/academics/faculty/entrepreneurship/ 琉球frogs
琉球frogs 紹介動画
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